【発行国】 日本国特許庁(JP)
【公報種別】 特許公報(B2)
【特許番号】 特許第3829306号(P3829306)
【登録日】 平成18年7月21日(2006.7.21)
【発行日】 平成18年10月4日(2006.10.4)
【発明の名称】 舗装体
【国際特許分類】
  E01C  5/22   (2006.01)
  E01C  5/00   (2006.01)
【FI】
  E01C 5/22
  E01C 5/00
【請求項の数】 16
【全頁数】 19
【出願番号】 特願2003−311974(P2003−311974)
【出願日】 平成15年7月31日(2003.7.31)
【公開番号】 特開2005−54552(P2005−54552A)
【公開日】 平成17年3月3日(2005.3.3)
【審査請求日】 平成15年7月31日(2003.7.31)
【特許権者】
【識別番号】 503263425
【氏名又は名称】 泉建設株式会社
【住所又は居所】 富山県富山市亀谷591番地1
【特許権者】
【識別番号】 504109137
【氏名又は名称】 有限会社エーコージャパン
【住所又は居所】 新潟県新潟市弁天橋通2丁目31番8号
【発明者】
【氏名】 泉 英之
【住所又は居所】 富山県上新川郡大山町亀谷591番地1 泉建設株式会社内
【審査官】 深田 高義
【参考文献】
【文献】 特開平03−271405(JP,A)
【文献】 特開平03−059201(JP,A)
【文献】 特開2001−140205(JP,A)
【文献】 特開2002−356804(JP,A)
【文献】 特開平11−310708(JP,A)
【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C  5/22
E01C  5/00

【特許請求の範囲】
【請求項1】
 路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状に形成した本体部と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成するとともに、前記本体部に設けた孔または切欠きと嵌合する構造としたドレーン部とを有する舗装体。
【請求項2】
 請求項1に記載した舗装体であって、
 ドレーン部は、地上に突出させる一方側の端部を凹状にするとともに、地下に向かう他方側の端部を凸状に形成した舗装体。
【請求項3】
 請求項1または2に記載した舗装体であって、
 骨材の素材と透水率との関係および骨材の粒径と透水率との関係の一方または双方に基づいて、目的の透水率で構成した舗装体。
【請求項4】
 請求項1から3のいずれか一項に記載した舗装体であって、
 本体部は、硬い材質の廃材を用いて形成した上層部と、当該上層部よりも軟らかい材質の廃材を用いて形成した下層部とを有する舗装体。
【請求項5】
 請求項1から4のいずれか一項に記載した舗装体であって、
 複数の本体部に対して一のドレーン部を備える場合には、
 透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって本体部を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部に向けて水を導く構成とした舗装体。
【請求項6】
 路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状に形成した本体部と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成し、さらに地上に突出させる一方側の端部を凹状にするとともに、地下に向かう他方側の端部を凸状に形成したドレーン部とを有する舗装体。
【請求項7】
 請求項6に記載した舗装体であって、
 骨材の素材と透水率との関係および骨材の粒径と透水率との関係の一方または双方に基づいて、目的の透水率で構成した舗装体。
【請求項8】
 請求項6または7に記載した舗装体であって、
 本体部は、硬い材質の廃材を用いて形成した上層部と、当該上層部よりも軟らかい材質の廃材を用いて形成した下層部とを有する舗装体。
【請求項9】
 請求項6から8のいずれか一項に記載した舗装体であって、
 複数の本体部に対して一のドレーン部を備える場合には、
 透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって本体部を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部に向けて水を導く構成とした舗装体。
【請求項10】
 路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状に形成した本体部と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成したドレーン部とを有し、
 骨材の素材と透水率との関係および骨材の粒径と透水率との関係の一方または双方に基づいて、目的の透水率で構成した舗装体。
【請求項11】
 請求項10に記載した舗装体であって、
 本体部は、硬い材質の廃材を用いて形成した上層部と、当該上層部よりも軟らかい材質の廃材を用いて形成した下層部とを有する舗装体。
【請求項12】
 請求項10または11に記載した舗装体であって、
 複数の本体部に対して一のドレーン部を備える場合には、
 透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって本体部を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部に向けて水を導く構成とした舗装体。
【請求項13】
 路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状に形成するとともに、硬い材質の廃材を用いて形成した上層部と、当該上層部よりも軟らかい材質の廃材を用いて形成した下層部とを有する本体部と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成したドレーン部とを有する舗装体。
【請求項14】
 請求項13に記載した舗装体であって、
 複数の本体部に対して一のドレーン部を備える場合には、
 透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって本体部を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部に向けて水を導く構成とした舗装体。
【請求項15】
 路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状にそれぞれ形成した複数の本体部と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成した一のドレーン部とを有し、
 透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって前記本体部を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部に向けて水を導く構成とした舗装体。
【請求項16】
 請求項1から15のいずれか一項に記載した舗装体であって、
 本体部と同様にして板状に形成し、路床上または路盤上に敷く本体部どうしを連結する連結部を有する舗装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
 【0001】
 本発明は、路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体に関する。
【背景技術】
 【0002】
 従来では、路面上の水(主に雨水)を捌き易くするため、コンクリートを透水性とする技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。また、産業廃棄物を有効利用するため、当該産業廃棄物を骨材として用いる技術が知られている(例えば特許文献2を参照)。さらには、透水性を確保しながらも施工を容易にするため、舗装体を二層構造とする技術が知られている(例えば特許文献3を参照)。
  【特許文献1】 特開平5−339904(第2−3頁,図1)
  【特許文献2】 特開2002−332608(第2−3頁,図1)
  【特許文献3】 特開2002−167703(第3−4頁,図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
 【0003】
 上述した従来の技術では、路床上または路盤上に敷き詰めて舗装するコンクリートブロック等を透水性にしたに過ぎない。そのため、路面上の水を路床等(すなわち路床や路盤)まで浸透させることはできるものの、多くの水はコンクリートブロック等と路床等との間にとどまり、なかなか地中に浸透してゆかない。また、コンクリートブロック等と路床等との間に水が溢れると、路面上の水を捌けなくなって水溜まりができやすい。さらに、透水率を一定とした場合、路床等の土質(例えば礫質,砂質,粘土質等)によっては水捌けが良くなったり悪くなったりする。
 【0004】
 本発明は、路面上の水を路床等だけではなく地中にも浸透させ、より多くの水を捌くことを目的の一つとする。また本発明は、路床等の土質に応じて透水率が変えられるようにしてほぼ均等に水捌けできるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
 【0005】
(1)課題を解決するための手段(以下では単に「解決手段」と呼ぶ。)1は、図1に模式的に示すように、路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体1であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状に形成した本体部3と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部3とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成するとともに、前記本体部3に設けた孔5または切欠き4と嵌合する構造としたドレーン部6とを有する。
 【0006】
 解決手段1によれば、舗装体1は一以上の本体部3と、一以上のドレーン部6とを有する。本体部3とドレーン部6とは、形状が異なる点を除けば、双方とも骨材と接着剤とを混合して形成する。骨材として用いることができる廃材(素材)には、自然廃材(籾殻,木屑,ウッドチップ,砂利等)や、産業廃材(プラスチック片,コンクリート片,ガラス片等)がある。よって、多くの廃材をリサイクルに有効活用できる。
 【0007】
 ドレーン部6は、本体部3に設けた孔5または切欠き4と嵌合する構造となっている。孔5および切欠き4は、いずれも本体部3を貫通させてもよく、非貫通としてもよい。嵌合の形態は嵌め合いができれば任意であって、例えば隙間嵌,締り嵌め,止り嵌め等のいずれの形態でもよい。締り嵌めとしては、一方(例えばドレーン部6)をネジ形状とし、他方(例えば本体部3)をナット形状とすれば、締結後は外れにくくなる。このように嵌合可能な形態としたことにより、本体部3とドレーン部6とを簡単に嵌めたり外したりすることができる。
 【0008】
 ドレーン部6の透水率(第2透水率)は本体部3の透水率(第1透水率)よりも同じか高くし、かつ本体部3とほぼ同位置(すなわち路面付近)から地下方向に延ばして埋めるので、水(雨水や表面水等のように路面上に存する流体を意味する。本明細書において以下同じ。)は地中に浸透し易くなる。すなわち路面上の水は本体部3を通じて路床等にも浸透させるとともに、ドレーン部6を通じて地中にも浸透させることができるので、より多くの水を捌いて水溜まりの発生を少なく抑えることができる。
 なお、下地処理として砕石基礎を施せば、さらに多くの水が捌けて透水効果が増大する。また、より多くの水を地中に浸透させれば、側溝や河川に流れる水の量を減少でき、地中の保水力や地下水を増大させることができ、地表面の温暖化防止に寄与し得る。
 【0009】
 本体部3は路床上または路盤上に敷くだけであるので、取り替えが容易に行える。すなわち長年の使用によって目詰まりが発生して透水効果が低下したときは、水洗い等により目詰まりの原因となった物を取り除くことができる。よって本体部3の再利用ができ、しかも簡単で素早く透水効果を回復させることができる。
 なお、硬化後にほぼ透明(あるいは半透明)となる接着剤を用いた場合には、骨材として用いた素材そのものの特性(例えば色合いや木目等)をそのまま生かすことができる。また、接着剤としてエステル系高分子ポリマーとメタノール溶液との混合物を用いた場合には、植物の生育にほとんど障害を与えず、自然環境を保全することができる。
 【0010】
(2)解決手段2は、請求項1に記載した舗装体1であって、ドレーン部6は、地上に突出させる一方側の端部7を凹状にするとともに、地下に向かう他方側の端部8を凸状に形成した。
 【0011】
 解決手段2によれば、ドレーン部6にかかる一方側の端部7を凹状にすると、当該凹状部分から水が内部側に浸透し易くなる。同様に他方側の端部8を凸状にすると、路床等を掘った穴に埋め易くなるだけでなく、平面状に形成した場合に比べてドレーン部6を伝わってきた水を地中に浸透させ易くなる。
 また、端部7,8どうしの凹凸を面接触可能に構成すれば、二以上のドレーン部6を直列方向(軸方向)に重ねることができる。図1に示す例では、ドレーン部6aとドレーン部6bとを直列して重ねている。本例では二つのドレーン部6を直列に重ねたが、三以上のドレーン部6を直列に重ねることも可能である。こうして直列させた二以上のドレーン部6を埋めることができる程度の穴をドリル等で掘り、その穴にドレーン部6を直列に埋めれば、路面上の水を浸透させることができる深度を増大させることができる。なお、端部7,8どうしを面接触可能に構成するだけでなく、さらに連結可能に構成すれば、予め二以上のドレーン部6を直列に重ねておくことができるので、穴に埋め易くなる。
 【0012】
(3)解決手段3は、請求項1または2に記載した舗装体1であって、骨材の素材と透水率との関係および骨材の粒径と透水率との関係の一方または双方に基づいて、目的の透水率で構成した。
 【0013】
 解決手段3によれば、廃材(特に自然廃材)は素材によって粒径が異なり、同じ廃材であっても破砕や粉砕等を行えば粒径を小さくすることもできる。こうして粒径が大きかったり小さければ、廃材どうしが当たって生ずる隙間も異なる。隙間が広がれば水は浸透し易くなり、逆に隙間が狭くなれば水は浸透し難くなる。このように粒径の相違により水の浸透しやすさが相違する点を考慮すると、舗装体1の透水率を異ならせることができる。よって舗装体1に用いる骨材の素材と透水率との関係、または骨材の粒径と透水率との関係について実験や実地試験等で予め求めておき、その一方または双方の関係に基づいて目的の透水率からなる舗装体1を容易に製造することが可能になる。
 【0014】
(4)解決手段4は、請求項1から3のいずれか一項に記載した舗装体1であって、本体部3は、硬い材質の廃材を用いて形成した上層部と、当該上層部よりも軟らかい材質の廃材を用いて形成した下層部とを有する。
 【0015】
 解決手段4によれば、硬い材質の廃材には、例えばコンクリート片,プラスチック片,石類(砂,砂利,石片等を含む)などが該当する。軟らかい材質の廃材には、例えば籾殻,ゴムチップ,木屑,ウッドチップ等が該当する。硬い材質の廃材を用いた上層部は、車や人が通行しても変形しにくい。軟らかい材質の廃材を用いた下層部は、クッションの役目を果たし、路床や路盤の表面の凹凸を吸収して路面をほぼ平坦にすることができる。
 【0016】
(5)解決手段5は、請求項1から4のいずれか一項に記載した舗装体1であって、複数の本体部3に対して一のドレーン部6を備える場合には、透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって本体部3を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部6に向けて水を導く構成とした。
 【0017】
 解決手段5によれば、下層部は透水率が低いので、水は上層部を伝わり易くなる。こうして伝わる水はドレーン部6に導かれてゆき、最終的に地中に浸透する。よって、より多くの水を素早く地中に浸透させることができるようになる。
 【0018】
(6)解決手段6は、路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体1であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状に形成した本体部3と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部3とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成し、さらに地上に突出させる一方側の端部7を凹状にするとともに、地下に向かう他方側の端部8を凸状に形成したドレーン部6とを有する。
 【0019】
 解決手段6によれば、本体部3の透水率(第1透水率)よりも同じか高くした透水率(第2透水率)からなるドレーン部6を有するので、より多くの水を捌いて水溜まりの発生を少なく抑えることができる。また、本体部3は路床上または路盤上に敷くだけであるので、取り替えが容易に行え、しかも水洗い等により簡単で素早く透水効果を回復させることができる。さらに、凹状の端部7と凸状の端部8とに形成したドレーン部6とを有するので、平面状に形成した場合に比べてドレーン部6を伝わってきた水を地中に浸透させ易くなる。
 【0020】
(7)解決手段7は、請求項6に記載した舗装体1であって、骨材の素材と透水率との関係および骨材の粒径と透水率との関係の一方または双方に基づいて、目的の透水率で構成した。
 【0021】
 解決手段7によれば、解決手段6で得られる効果とともに、解決手段3と同等の効果を得ることができる。
 【0022】
(8)解決手段8は、請求項7または8に記載した舗装体1であって、本体部3は、硬い材質の廃材を用いて形成した上層部と、当該上層部よりも軟らかい材質の廃材を用いて形成した下層部とを有する。
 【0023】
 解決手段8によれば、解決手段6で得られる効果とともに、解決手段4と同等の効果を得ることができる。
 【0024】
(9)解決手段9は、請求項6から8のいずれか一項に記載した舗装体1であって、複数の本体部3に対して一のドレーン部6を備える場合には、透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって本体部3を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部6に向けて水を導く構成とした。
 【0025】
 解決手段9によれば、解決手段6で得られる効果とともに、解決手段5と同等の効果を得ることができる。
 【0026】
(10)解決手段10は、路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体1であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状に形成した本体部3と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部3とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成したドレーン部6とを有し、
 骨材の素材と透水率との関係および骨材の粒径と透水率との関係の一方または双方に基づいて、目的の透水率で構成した舗装体1。
 【0027】
 解決手段10によれば、本体部3の透水率(第1透水率)よりも同じか高くした透水率(第2透水率)からなるドレーン部6を有するので、より多くの水を捌いて水溜まりの発生を少なく抑えることができる。また、本体部3は路床上または路盤上に敷くだけであるので、取り替えが容易に行え、しかも水洗い等により簡単で素早く透水効果を回復させることができる。さらに、路床等の土質に応じた透水率を目的の透水率とした舗装体1を容易に製造することが可能になる。
 【0028】
(11)解決手段11は、請求項10に記載した舗装体1であって、本体部3は、硬い材質の廃材を用いて形成した上層部と、当該上層部よりも軟らかい材質の廃材を用いて形成した下層部とを有する。
 【0029】
 解決手段11によれば、解決手段10で得られる効果とともに、解決手段4と同等の効果を得ることができる。
 【0030】
(12)解決手段12は、請求項10または11に記載した舗装体1であって、複数の本体部3に対して一のドレーン部6を備える場合には、透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって本体部3を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部6に向けて水を導く構成とした。
 【0031】
 解決手段12によれば、解決手段10で得られる効果とともに、解決手段5と同等の効果を得ることができる。
 【0032】
(13)解決手段13は、路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体1であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状に形成するとともに、硬い材質の廃材を用いて形成した上層部と、当該上層部よりも軟らかい材質の廃材を用いて形成した下層部とを有する本体部3と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部3とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成したドレーン部6とを有する。
 【0033】
 解決手段13によれば、本体部3の透水率(第1透水率)よりも同じか高くした透水率(第2透水率)からなるドレーン部6を有するので、より多くの水を捌いて水溜まりの発生を少なく抑えることができる。また、本体部3は路床上または路盤上に敷くだけであるので、取り替えが容易に行え、しかも水洗い等により簡単で素早く透水効果を回復させることができる。さらに、上層部は車や人が通行しても変形しにくく、下層部はクッションの役目を果たすとともに路床や路盤の表面の凹凸を吸収して路面をほぼ平坦にできる。
 【0034】
(14)解決手段14は、請求項13に記載した舗装体1であって、複数の本体部3に対して一のドレーン部6を備える場合には、透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって本体部3を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部6に向けて水を導く構成とした。
 【0035】
 解決手段14によれば、解決手段13で得られる効果とともに、解決手段5と同等の効果を得ることができる。
 【0036】
(15)解決手段15は、路床上または路盤上に敷き詰めて舗装を行うために用いる舗装体1であって、
 廃材を用いた骨材と当該骨材どうしを接着させる接着剤とを混合して第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状にそれぞれ形成した複数の本体部3と、
 前記廃材と同種または異種の廃材を用いた骨材と前記接着剤とを混合して第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)にし、前記本体部3とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成した一のドレーン部6とを有し、
 透水率の高い上層部と透水率の低い下層部とによって前記本体部3を構成し、前記上層部を伝って前記一のドレーン部6に向けて水を導く構成とした。
 【0037】
 解決手段15によれば、本体部3の透水率(第1透水率)よりも同じか高くした透水率(第2透水率)からなるドレーン部6を有するので、より多くの水を捌いて水溜まりの発生を少なく抑えることができる。また、本体部3は路床上または路盤上に敷くだけであるので、取り替えが容易に行え、しかも水洗い等により簡単で素早く透水効果を回復させることができる。さらに、水は一のドレーン部6に導かれて最終的に地中に浸透するので、より多くの水を素早く地中に浸透させることができるようになる。
 【0038】
(16)解決手段16は、請求項1から15のいずれか一項に記載した舗装体1であって、本体部3と同様にして板状に形成し、路床上または路盤上に敷く本体部3どうしを連結する連結部2を有する。
 【0039】
 解決手段16によれば、本体部3を特にブロック形状等とした場合には、連結部2によって本体部3どうしを連結する。図1に示す例では、隣接させた本体部3aと本体部3bとに設けた切欠き4に対して矢印Daのように連結部2を嵌めて連結する。本例では本体部3a,3bを連結したが、三以上の本体部3を縦横に連結することも容易である。こうして連結された本体部3どうし(図1では本体部3a,3b)はズレが生じないので、本体部3相互間に砂(いわゆる砂目地)を注入してズレを防止する必要もない。また、ドレーン部6は地下方向に延ばして埋めるので、本体部3の位置ズレを防止する。したがって、舗装体1により路面を舗装するのに必要な手間と時間を少なく抑えることができる。
 なお、連結部2を取り外し可能な構造に形成すれば、本体部3の移動や取り替えが容易になる。また、連結部2とドレーン部6とを一体化すれば、上述した本体部3の連結機能と、地中に水を浸透させる機能との双方を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
 【0040】
 次に、本発明を実施するための最良の形態について、実施例に従って説明する。
【実施例】
 【0041】
 本実施例は、図2から図14までを参照しながら説明する。なお、舗装体1に相当する部材には舗装部材48を適用し、本体部3に相当する部材には舗装ブロック32(「舗装パネル」とも呼ぶ。)を適用し、ドレーン部6に相当する部材には舗装ドレーン40を適用し、連結部2に相当する部材には連結部材44を適用する(図4図10を参照)。
 【0042】
 〔舗装体の製造〕
 まず、舗装部材48を構成する各部材の製造工程(製造方法)について、図2を参照しながら説明する。当該図2には、製造工程の一例をフローチャートで表す。なお、構成部材としての舗装ブロック32,舗装ドレーン40,連結部材44等は、透水率をほぼ同一とするか相違させるかの点で異なるものの、いずれも同一の製造工程によって製造できる。よって特に明示しない限り、舗装ブロック32の製造工程について説明する。
 【0043】
 図2に示す製造工程において、舗装ブロック32を製造するにあたって骨材の粒径と透水率との関係が分かっていない場合には(ステップS10でNO)、実験や実地試験等を行なって骨材の粒径と透水率との関係を導き出しておく〔ステップS12〕。
実験例としては、試料となる骨材を箱に投入し、箱の上側から一定容量(ミリリットル)の水を注ぐ。そして、骨材の上面から水が無くなるまでに要する浸透時間(秒)を複数回計測し、その計測結果の平均値から流量(ミリリットル/秒)や浸透速度(センチメートル/秒)を算出する。すなわち、算術式〔流量=(注いだ水の容量)/(浸透時間),浸透速度=(流量)/(箱の断面積)〕に基づいて求める。こうして求めた浸透速度は透水率に相当する。例えば、骨材として籾殻,木屑,ウッドチップ,砂利等の素材を用いた場合の試験結果を表1に示す。
 【0044】
  【表1】

 【0045】
 上記試験結果によれば、砂利は粒径が小さくなるほどに透水率は小さくなる。これは粒径が大きくなると、骨材どうしが当たることで生ずる隙間も広がって、透水率は大きくなる。逆に粒径が小さくなると、隙間は狭くなって、透水率も小さくなる。
 これに対して、籾殻と木屑とでは粒径は異なるものの、近い透水率になっている。砂利との違いは素材の弾力性であることから、籾殻は粒径が小さくてもある程度の隙間を確保することで透水率を高めていると考えられる。
 【0046】
 ステップS16の実験や実地試験等によって骨材の粒径と透水率との関係を導き出すか、あるいは当該関係を既に導き出していたときは(ステップS10でYES)、骨材として用いる廃材(素材)が目的とする透水率に見合う粒径になっているかを検査する〔ステップS14〕。もし、目的の透水率に見合う粒径であれば(YES)、廃材をそのまま骨材として用いる。一方、目的の透水率に見合う粒径でないときは(NO)、当該透水率に見合う粒径になるまで粉砕機(あるいは破砕機)を用いて廃材を砕く〔ステップS16〕。舗装部材48を構成する場合には、舗装ブロック32を第1透水率とし、舗装ドレーン40が第2透水率(ただし第2透水率≧第1透水率)とする必要がある。よって、これらの透水率に見合う適切な廃材(同種の素材または異種の素材)を用いるか、粉砕機を用いて目的の粒径になるまで砕く。こうして適切な粒径の廃材からなる骨材を得る。
 【0047】
 次に、骨材と接着剤とを所定の割合で混合する〔ステップS18〕。骨材どうしを接着させる接着剤には、例えばエステル系高分子ポリマーとメタノール溶液との混合物を用いるのが望ましい。この場合には、植物の生育にほとんど障害を与えず、自然環境を保全することができる。混合比率は、骨材(素材)の構造や水分吸収率等の影響を受けるため、予め骨材ごとに実験等を行なって設定しておく。上述した表1に示した骨材についての混合比率(すなわち骨材重量:接着剤重量)は、例えば次の表2のようになる。
 【0048】
  【表2】

 【0049】
 上述したような混合比率で骨材と接着剤とを混合し、その混合物を目的形状(例えばブロック形状,柱形状,円形状等)の型枠に入れて加圧形成し〔ステップS20〕、硬化して完成させた舗装ブロック32を取り出す〔ステップS22〕。他に同一形状の舗装ブロック32を製造するときは(ステップS24でYES)、骨材と接着剤の混合から行う場合には実線で示すようにステップS18から繰り返し、混合物が多くあって加圧形成のみで済む場合には二点鎖線で示すようにステップS20から繰り返す。この繰り返しによって、必要数量の舗装ブロック32を製造することができる。
 なお、本例では舗装ブロック32の製造について説明したが、柱状の舗装ドレーン40や平板状の連結部材44等の製造についても同様の工程で行えばよい。したがって、舗装ドレーン40や連結部材44等についてそれぞれ必要数量を製造することができる。
 【0050】
 上述したような製造工程によれば、舗装部材48(すなわち舗装ブロック32,舗装ドレーン40,連結部材44等)を製造することができる。ただし、舗装部材48を大量に製造したい場合や、舗装部材48の透水率や形状等の精度を一定範囲に維持したい場合には、製造装置を用いて製造するのがよい。製造装置の構成例について、図3を用いて説明する。当該図3には、製造装置の構成例をブロック図で表す。なお、骨材を砕く機械としては粉砕機や破砕機等があるが、ここでは粉砕機を用いた例を説明する。
 【0051】
 〔舗装体の製造装置〕
舗装部材48の製造装置は、骨材を一時的に貯留するホッパー20や、当該ホッパー20から送り込まれた骨材を所定粒径に粉砕する粉砕機22、接着剤を注入する注入機24、粉砕機22から送られた骨材と注入機24から注入された接着剤とを混合する混合機26、混合機26から送られた混合物を型枠に入れて加圧形成する加圧成形機28、これらの機器の作動を個別に制御する製造制御装置10などを有する。
 【0052】
 製造制御装置10は、舗装部材48の製造を司るべくCPU(プロセッサ)12を中心に構成する。当該製造制御装置10は、製造制御プログラムや所要のデータ等を格納したROM14、処理時間等のような一時的データを記憶可能なRAM16、その他には入出力処理回路や通信制御回路などを備える。ROM14に格納された製造制御プログラムには、上述した図2の製造工程を実現するプログラムや舗装部材48の製造に必要な他のプログラムを含む。上述した骨材の粒径と透水率との関係や、骨材と接着剤との混合比率、混合や加圧形成に要する時間等に関するデータ(以下では単に「製造用データ」と呼ぶ。)は、ROM14およびRAM16のうちで一方または双方に記憶する。その他の構成要素については周知の技術と同様であるので、図示および説明を省略する。
 【0053】
 まず製造に先立つ準備として、ホッパー20には骨材を貯留させ、注入機24には接着剤を充填し、製造用データをROM14(またはRAM16)に記憶しておく。図2との関係では、製造制御装置10は次のように制御する。すなわち、ホッパー20から骨材を送り出した後、粉砕機22によって目的の粒径になるまで当該骨材を粉砕する(ステップS16)。混合比率に従った割合で骨材と接着剤とを混合機26に投入し、骨材のほぼ全体が接着剤でコーティングされるのに適切な時間だけ混合する(ステップS18)。こうしてできた混合物を加圧成形機28に投入し、硬化させるのに適切な時間だけ加圧形成を行い(ステップS20)、硬化した後に取り出す(ステップS22)。可燃性の廃材(例えば籾殻,木屑,ウッドチップ等)を骨材として用いたとしても、当該骨材のほぼ全体を接着剤でコーティングすれば、硬化後は素材自体が表れない。よって、コーティングした接着剤が熱によって融解されるまでの時間あるいはその温度までは、炎をさえぎって燃えにくくなる。そして、上述した{(1)骨材の粉砕および接着剤の注入→(2)混合→(3)加圧形成→(4)取り出し}のプロセスを繰り返すと、必要数量の舗装部材48(すなわち舗装ブロック32,舗装ドレーン40,連結部材44等)を製造することができる。
 【0054】
 上述した製造工程および製造装置によって製造した舗装部材48を用いて舗装を行う施工例について、図4から図10までを参照しながら説明する。なお、舗装部材48を路床上に敷き詰める場合と、同じく路盤上に敷き詰める場合とでは同等に施工を行える。よって本実施例では、路床上に敷き詰める施工例を代表して説明する。
 【0055】
 〔舗装体を用いた施工例〕
 まず図4に示すように、ドリル等の工具を用いて路床G2に穴30を掘る。当該穴30は、舗装ドレーン40を埋められるだけの大きさ(径や深さ)が必要である。穴30に舗装ドレーン40の下端部42から埋め、図5に示すように上端部38を路床G2から露出させる。下端部42は端部8に相当し、上端部38は端部7に相当する。そして、当該上端部38と舗装ブロック32の孔34とを嵌め合わせるため、上方から矢印D2のようにして舗装ブロック32を下ろす。こうして嵌合させた状態を図6に示す。さらに図7に示す縦断面図や図8に示す斜視図のように、舗装ドレーン40と嵌合させた舗装ブロック32aに隣接して他の舗装ブロック32bを敷き詰め、二つの舗装ブロック32相互間を連結部材44で連結する。図7の例では、双方の舗装ブロック32に備えた切欠き36bに対して、連結部材44を矢印D4のように嵌め込む様子を示す。また、図8の例では連結後の状態を示す。
 【0056】
 二つの舗装ブロック32を連結するのに用いる連結部材44は「接合ジョイント」とも呼ばれ、例えば図9に示すように平面が水中メガネを模した形状をなす板状の部材である。これに対して連結には用いず、舗装ブロック32の切欠き36部分の埋め合わせには、端片部材46を用いる。この端片部材46は、連結部材44と同様の透水率で製造するのが望ましい。例えば図8に示す例では、端側の切欠き36a,36cの埋め合わせに端片部材46を用いる。
 【0057】
 図7および図8では、二つの舗装ブロック32、これらを連結する連結部材44、一つの舗装ドレーン40とからなる舗装部材48の例を示した。同様にして九つの舗装ブロック32、これらを連結する連結部材44、一つの舗装ドレーン40とからなる舗装部材48の例を図10に示す。九つの舗装ブロック32は、八つの舗装ブロック32aと、一つの舗装ブロック32bとからなる。なお、図10では分かり易くするために、連結部材44に斜線ハッチを施している。このように連結部材44を用いて連結したことにより、九つの舗装ブロック32を一体化することができる。そのうちの一つである舗装ブロック32aに嵌合する舗装ドレーン40は、穴30に埋められているので、全体的に水平方向(横方向)に対するズレを防止することができる。本例では、二つまたは九つの舗装ブロック32を連結したが、連結する数は路床G2に敷き詰める面積等に応じて定め得る。
 【0058】
 なお、図4から図8までに示す例では、穴30に一つの舗装ドレーン40を埋める構成としたが、穴30を深く掘る必要があるものの、複数の舗装ドレーン40を直列に重ねて埋める構成としてもよい。図11に示す例では、舗装ドレーン40aと舗装ドレーン40bを直列方向(軸方向)に重ねている。舗装ドレーン40aの下端部42aと舗装ドレーン40bの上端部38aとは面接触させるように凹凸を調整したので、両者を嵌めやすく、水の伝わり易さも変わらない。三以上の舗装ドレーン40を直列に重ねて埋める場合も同様である。このように舗装ドレーン40を深く埋めることにより、水を地中深くに浸透させて、路面上の水をより多く捌くことができるようになる。
 【0059】
 上述した例では舗装部材48を路床G2上(あるいは路盤上)に敷き詰めて舗装を行う施工例について適用したが、当該舗装部材48を法面(斜面)上に敷き詰めて舗装を行う施工例についても同様に適用することができる。図12に示す斜視図や、図13に示す縦断面図に示す例では、法面G4上に多数の舗装ブロック32を敷き詰めている。これら舗装ブロック32のうち、五つは舗装ブロック32aを用いており、各舗装ブロック32aを対応する舗装ドレーン40に嵌め合わせている。
 なお、路床G2や法面G4に舗装ブロック32を敷き詰めると、植物の活着を阻害するので、除草手間を省くことができるようになる。
 【0060】
 法面G4に敷き詰めた舗装ブロック32における低位側端部には、舗装ブロック32と同様にして製造した排水部材50と、コンクリート製の土台54とを設置している。排水部材50は図面横方向に対して延びた柱状の部材であって、排水性を良くするために排水孔52を中央部に貫通させている。図13に示すように雨が降った場合、水は矢印D6に示すように舗装ブロック32から舗装ドレーン40を通じて法面G4(地面)に浸透してゆくほか、矢印D8に示すように舗装ブロック32を伝わってゆき排水部材50に到達する。こうして二つの経路で水を逃がして、法面G4が崩れるのを防止できる。
なお、二点鎖線で囲む部位について下地処理として砕石基礎56を施せば、さらに多くの水が捌けて透水効果が増大する。また、より多くの水を地中に浸透させれば、側溝や河川に流す水の量を減少させるとともに、地中の保水力や地下水を増大させることができ、地表面の温暖化防止に寄与し得る。
 【0061】
 ここで、矢印D8に示すような経路で舗装ブロック32を伝わらせ、より多くの水を排水部材50に逃がすには、当該舗装ブロック32を二層構造とするのが望ましい。図14に示す例の舗装ブロック32は、上層部58と下層部60とで構成している。この場合、下層部60よりも上層部58の透水率を高くすれば、水は下層部60に伝わり難くなる反面、上層部58を伝わってゆき易くなる。本例では法面G4上に敷き詰める舗装ブロック32に適用したが、図10に示すようにほぼ平坦な路床G2上に敷き詰める舗装ブロック32にも同様に適用することができる。この場合も水は上層部58を伝わってゆき、舗装ドレーン40から地中に浸透し易くなる。
その他に二層構造にする例としては、上層部58と下層部60とで異なる硬度(材質)の廃材を用いて構成してもよい。例えば上層部58には硬い材質の廃材(例えばコンクリート片やプラスチック片等)を用いて形成し、下層部60には当該上層部58よりも軟らかい材質の廃材(例えば籾殻,ゴムチップ等)を用いて形成する。こうすれば、上層部58の硬さによって、車や人が通行しても変形しにくくなる。また、下層部60のクッション機能によって、路床G2や法面G4の表面の凹凸を吸収して路面をほぼ平坦にすることができる。
 なお、上述したような二層構造に限らず、必要であれば透水率および硬度のうちで一方または双方を変えて三層構造以上の多層構造としてもよい。いずれの場合でも水を効率よく伝えて、地中に浸透させたり、排水したりすることができる。
 【0062】
 上述した実施例によれば、次のような各効果を得ることができる。
(1)図7図8を参照すると、舗装部材48は舗装ブロック32と舗装ドレーン40とによって構成した。舗装ブロック32は第1透水率にし、路床上または路盤上に敷くために板状に形成した。舗装ドレーン40は第2透水率にし、舗装ブロック32とほぼ同位置から地下方向に延ばして埋めるために柱状に形成した。このように舗装ブロック32と舗装ドレーン40とは、形状が異なる点を除けば、双方とも骨材と接着剤とを混合して形成した。骨材として用いたのは廃材(自然廃材や産業廃材等)であるので、リサイクルに有効活用できる。
舗装ドレーン40の透水率(第2透水率)は舗装ブロック32の透水率(第1透水率)よりも同じか高くし、かつ舗装ブロック32とほぼ同位置(すなわち路面付近)から地下方向に延ばして埋めるので、水は地中に浸透し易くなる。すなわち路面上の水は舗装ブロック32を通じて路床等にも浸透させるとともに、舗装ドレーン40を通じて地中にも浸透させることができるので、より多くの水を捌いて水溜まりの発生を少なく抑えることができる。路床G2等の土質に応じて舗装部材48の透水率を変えてゆけば、その土質に合わせて路面全体でほぼ均等に水捌けができるようになる。
舗装ブロック32は路床G2上に敷くだけであるので、取り替えが容易に行える。すなわち長年の使用によって目詰まりが発生して透水効果が低下したときは、水洗い等により目詰まりの原因となった物を取り除くことができる。よって舗装ブロック32の再利用ができ、しかも簡単で素早く透水効果を回復させることができる。硬化後にほぼ透明(あるいは半透明)となる接着剤を用いた場合には、骨材として用いた素材そのものの特性(例えば色合いや木目等)をそのまま生かすことができる。
なお、路床G2が土間コンクリート等のときは、当該コンクリート表面と舗装ブロック32とを接着剤で貼り付けたり、舗装ブロック32どうしを接着剤で接着してもよい。この場合、コンクリートにあけた穴30を通して舗装ドレーン40を埋めることになる。こうすれば簡単な作業で舗装部材48を路床G2上に敷き詰めることができ、水平方向へのズレも確実に防止できる。また施工費用も安く抑えることができる。
 【0063】
(2)舗装ブロック32と同様にして板状に形成した連結部材44を用いて、路床G2上に敷く舗装ブロック32どうしを連結した(図7図8を参照)。こうして連結された舗装ブロック32どうし(図7図8では舗装ブロック32a,32b)はズレが生じないので、舗装ブロック32相互間に砂(いわゆる砂目地)を注入してズレを防止する必要もない。また、舗装ドレーン40は地下方向に延ばして埋めるので、舗装ブロック32の位置ズレを防止する。したがって、舗装部材48により路面を舗装するのに必要な手間と時間を少なく抑えることができる。なお、連結部材44を取り外し可能な構造に形成すれば、舗装ブロック32の移動や取り替えが容易になる。また、連結部材44と舗装ドレーン40とを一体化すれば、上述した舗装ブロック32の連結機能と、地中に水を浸透させる機能との双方を持たせることができる。
 【0064】
(3)舗装ドレーン40は、別体に形成した舗装ブロック32に設けた孔34と嵌合する構造とした(図5を参照)。このように嵌合可能な構造としたので、舗装ブロック32と舗装ドレーン40とを簡単に嵌めたり外したりすることができる。なお、一方(例えば舗装ドレーン40)をネジ形状とし、他方(例えば舗装ブロック32)をナット形状とすれば、締結後は外れにくくなる。
 【0065】
(4)舗装ドレーン40は、地上に突出させる一方側の上端部38を凹状にするとともに、地下に向かう他方側の下端部42を凸状に形成した(図5図8を参照)。上端部38を凹状にしたことにより、当該凹状部分から水が内部側に浸透し易くなる。下端部42を凸状にしたことにより、穴30に埋め易くなるだけでなく、平面状に形成した場合に比べて舗装ドレーン40を伝わってきた水を地中に浸透させ易くなる。また、上端部38と下端部42との凹凸を面接触可能に構成したので、二以上の舗装ドレーン40を直列方向(軸方向)に重ねることができる(図11を参照)。こうして直列方向に重ねれば、路面上の水を浸透させることができる深度を増大させることができる。なお、上端部38と下端部42とを面接触可能に構成するだけでなく、さらに連結可能に構成すれば、予め二以上の舗装ドレーン40を直列に重ねておくことができるので、穴30に埋め易くなる。
 【0066】
(5)舗装部材48を構成する舗装ブロック32,舗装ドレーン40,連結部材44等は、いずれも骨材の粒径と透水率との関係に基づいて、それぞれの透水率で構成した(表1を参照)。廃材(特に自然廃材)は素材によって粒径が異なり、同じ廃材であっても破砕や粉砕等を行えば粒径を小さくすることもできる。素材や粒径の相違により、舗装部材48の透水率を異ならせることができる。なお、骨材の素材と透水率との関係について実験や実地試験等で予め求めておき、目的の透水率からなる舗装部材48を容易に製造することも可能である。
 【0067】
(6)舗装ブロック32は、硬い材質の廃材(例えばコンクリート片やプラスチック片等)を用いて形成した上層部58と、当該上層部58よりも軟らかい材質の廃材(例えば籾殻,ゴムチップ等)を用いて形成した下層部60とを有する構成とした(図14を参照)。硬い材質の廃材を用いた上層部58は、車や人が通行しても変形しにくい。軟らかい材質の廃材を用いた下層部60は、クッションの役目を果たし、路床G2の表面の凹凸を吸収して路面をほぼ平坦にすることができる。
 【0068】
(7)図10図12等に示すように、複数の舗装ブロック32に対して一の舗装ドレーン40を備える場合には、透水率の高い上層部58と透水率の低い下層部60とによって舗装ブロック32を構成し、上層部58を伝わって一の舗装ドレーン40に向けて水を導く構成とした(図14を参照)。下層部60は透水率が低いので、水は上層部58を伝わり易くなる。こうして伝わる水は舗装ドレーン40に導かれてゆき、最終的に地中に浸透する。よって、より多くの水を素早く地中に浸透させることができるようになる。
 【0069】
(8)舗装部材48の製造装置は、目的の透水率に対応して廃材を砕く粉砕機22と、粉砕した廃材と接着剤とを混合する混合機26と、混合物を所定形状の型枠に入れて加圧成形する加圧成形機28とによって構成した(図3を参照)。この構成によれば、目的の透水率からなる舗装部材48を製造することができる。しかも、舗装部材48を大量に製造したり、舗装部材48の透水率や形状等の精度を一定範囲に維持することができる。
 【0070】
(9)舗装部材48を用いて行う路面の舗装工法は、第1工程として路床G2の表面から舗装ドレーン40の長さに対応した穴30を掘り、第2工程として穴30に舗装ドレーン40を埋めてその上端部38を路床G2の表面から突出させ、第3工程として上端部38と嵌合させながら舗装ブロック32を路床G2上に敷いた(図4図7を参照)。この工法によれば、路床G2上や法面G4上などで簡単に路面の舗装を行うことができる。
【他の実施例】
 【0071】
 以上では、本発明を実施するための最良の形態について実施例に従って説明したが、本発明は当該実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、次に示す各形態を実施することもできる。
 【0072】
(1)上述した実施例では、舗装ブロック32をブロック状(四角板形状)に形成し、舗装ドレーン40を円柱状に形成したが、どのような形状に形成するかは任意である。例えば多角板形状(三角形状や五角形状等)に形成したり、多角柱形状(四角柱状や五角形状等)に形成してもよい。舗装ブロック32の孔34を四角とし、舗装ドレーン40を四角柱状に形成すれば、両者間で相対的な回転が不能になり、回転方向のズレを防止できる。
 【0073】
(2)上述した実施例では、舗装部材48を構成する舗装ブロック32と舗装ドレーン40とを別体に形成したが(図5図8を参照)、一体に形成してもよい。一体化された舗装ブロック32および舗装ドレーン40について施工するには、舗装ドレーン40の部分を穴30に埋めればよい。この形成例では、舗装ブロック32と舗装ドレーン40とを嵌合する作業が不要になるので、舗装に要する作業時間を短縮することができる。
 【0074】
(3)上述した実施例では、舗装ブロック32には切欠き36を設けたが(図5図8を参照)、当該切欠き36を設けない舗装ブロック32としてもよい。土間コンクリート等に舗装する場合は、舗装ブロック32どうしを接着剤で接着すればよい。この場合でも結果的に複数の舗装ブロック32を連結することができる。
 【0075】
(4)上述した実施例では、舗装部材48の製造に用いる廃材は簡単のために一種類を適用したが、複数種類の廃材を混在させたものを骨材として用いてもよい。例えばコンクリート片とゴム片を混在させると、コンクリート片の硬さとゴム片の弾力性とを兼ねた舗装部材48を製造することが可能になる。このように、舗装を施す場所等に応じて混在させる廃材の種類を異ならせて舗装部材48を製造すれば、より効果的に路面の水を浸透させて水捌けを良くすることができる。
【産業上の利用可能性】
 【0076】
 本発明の舗装体は、道路(車道や歩道等)の舗装に利用できるだけでなく、道路以外の地面(例えば鉄路,敷地内の庭,工場内の通路等)の舗装にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
 【0077】
  【図1】 本発明の概要を模式的に示す斜視図である。
  【図2】 舗装体の製造工程を示すフローチャートである。
  【図3】 舗装体の製造装置を示すブロック図である。
  【図4】 路床に穴を掘った状態を示す縦断面図である。
  【図5】 ドレーン部材を埋めて本体部材を嵌め込む状態を示す縦断面図である。
  【図6】 路床上に敷いた状態を示す縦断面図である。
  【図7】 本体部材を連結する状態を示す縦断面図である。
  【図8】 連結部材を用いて連結した状態を示す斜視図である。
  【図9】 連結部材と端片部材の一例を示す斜視図である。
  【図10】 路床上に敷き詰めて舗装した状態の舗装体を示す平面図である。
  【図11】 二のドレーン部材を直列させて埋めた状態を示す縦断面図である。
  【図12】 法面に敷き詰めて舗装した状態の舗装体を示す斜視図である。
  【図13】 図12の構造を示す縦断面図である。
  【図14】 本体部材の二層構造を構成した例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
 【0078】
 1 舗装体
 2 連結部
 3(3a,3b) 本体部
 4 切欠き
 5 孔
 6(6a,6b) ドレーン部
 7,8 端部
 10 製造制御装置
 12 CPU
 14 ROM
 16 RAM
 20 ホッパー
 22 粉砕機
 24 注入機
 26 混合機
 28 加圧成形機
 30 穴
 32(32a,32b) 舗装ブロック(本体部)
 34 孔
 36 切欠き
 38 上端部(端部)
 40(40a,40b) 舗装ドレーン(ドレーン部)
 42 下端部(端部)
 44 連結部材(連結部)
 46 端片部材
 48 舗装部材
 50 排水部材(本体部)
 52 排水孔
 54 土台
 56 砕石基礎
 58 上層部
 60 下層部
 G2 路床
 G4 法面

【図面】
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】